タクシー運転手の楽しさと悲しみ

8日目を迎えて、劣等生だが、タクシーの仕事にはだいぶ慣れてきた。それでも罵声を喰うのは悲しい。ゴーアプリのナビ機能がポンコツで、迎車客を数十分待たせてしまった。比較的知的と思えたおっさんは、外で待っていたらしく、寒さと遅さに苛立っていた。それに拍車を掛けているのが、おっさんが飲んでいた店の従業員、私のタクシーを探し当てると、おっさんに謝れ、とここぞとばかりに迫り来る。たぶん、おっさんは普段はいい客なのであろう。おっさんもあおられて、調子に乗って、怒鳴り散らす。私は、ひたすら、謝るばかり、おっさんは、挙げ句の果てにゴーに通報するという。実は痛くも痒くもない。タクシー運転手はゴーに雇われているわけではない。タクシー代金に一律100円のアプリ手数料を乗っけて儲けている。運転手に本気で嫌われたらビジネスモデルは成り立たない。

帰路をしっかり運転するとおっさっんは、いくらか自分の恥ずかしいと思われる態度を反省したらしいが、こうゆう輩に限って、結構めんどくさい。

一方、夜間近くに上野の広小路に出ようと思って、走っていると、間違って、公園口(タクシーも誰もいない)に行ってしまった。そこで40歳くらいの女性が、遠慮がちに手を振る。私は、原則、客を選ばないので、ターンして、乗車していただいた。東大病院の救急病棟に行ってください、とお願いされる。わけを軽く聞くと、どうやら、ご主人が昼間倒れて、救急搬送されたらしい。埼玉県の上尾から、終電間際に上野に辿り着いたようだ。それも公園口にたどり着いてしまった。入谷口や広小路口なら、ともかく、公園口で、タクシーに乗るのは、夜遅い時間、ほぼ不可能である。

本郷まで送らせていただいた。心から感謝されたのはゆうまでもない。タクシーに乗っている時は、のんびりしているように見えたが、救急窓口に全力で走る姿を見て、いくらか、人の役にっ立ったような気分になった。2度と会うことはないと思うが、たぶん、それなりに感謝されたような気がする。これも出会いだ。

Tokyo Station: Ambulance