診断士の夕暮れ

かつて部下だった診断士の人物が、居酒屋を始める。彼は私と離れて、一時期新興宗教にハマり、それが理由で離婚している。息子の大学授業料、残った住宅ローンを支払うために相当無理して、コンサル仕事をしていたようだ。彼の息子も大学を卒業、聞けば、北海道の公務員になったようだ。

もともと、彼の実家は酒屋、酒屋の傍ら、繁華街で立ち飲み屋を営んでいた。関西だが、その店の東京店を出店するという。

話すと私との共通点がいくつもある。診断士もキャリアが長くなると、安い仕事が来なくなる。売れている時は「安い仕事はやらない」と豪語していたお返しのように高い仕事も安い仕事も来なくなる。

結果、私は肉体労働、彼は、居酒屋経営である。成功している連中(成功かどうか、疑問だが)は、組織に依存し、お上に媚を売っている。私も彼もお上に媚を売るような仕事はしない。補助金仕事はしない。下級役人や金融機関リタイア親父の素人にコンサルに関して、ガタガタ言われる筋合いはない。

とは言っても食わなければならない。悩みながらも、どうにでもなる、と思っている。今までもどうにかなってきた。今日はタクシーを初めてサボった。これもよかれ、だ。朝からビールを飲み、午後から企画書の準備をする。

人生の夕暮れ時をうまく迎えたい。妻は、人生に未練たっぷりのようだが、私は、ほんの少しの物欲とそれなりの「自由」があればいい。