最悪のタクシー

昨日は、タクシー運転手歴最悪の1日だった。午前中は順調にスタート、ゴー無線で呼ばれた向島方面の客が最悪だった。そもそもは、私が高速の入り口を間違えたのが、悪いのだが、途中から、高速に乗れ、下道で行け、挙げ句の果てには、時間に間に合わなかったら、損害賠償を請求するとまで、言い出した。

そこまで行っては、私の責任の範疇を越える。会社に電話するように言った。ことの顛末をすぐに会社に報告した。すると、珍しく、電話に出たおっさんは、私を責める。なんで、相手の名前を聞かなかったのか、どこから、乗せたのか、どんなタイプだったのか、など、動揺している私を追い込む。

そのまま業務を放棄して、帰ろうかとも思ったが、大人気ない。とりあえず、残りの時間はしっかり仕事しようと気を取り直したが、悪いことは重なるもので、韓国人3人を新宿まで運んだあと、無線が入った。代々木の裏道の医者まで呼び出し、そもそも、代々木の裏道なんぞ、自動車で走ったことはない。道は細く、一方通行だらけ。迷い込んだ挙句、細い道のカーブを曲がりきれず、左側のボディを大幅に擦った。

それで、業務は終了、ゆっくり事務所に帰った。

すると、当然、本日、午前中、事務所から呼び出しがかかる。文句を垂れた客に金を返すので、3000円、負担してくれ、と丁寧に言われる。たかが、3000円、黙って渡した。

タクシーの修理代こそ、請求されないものの、業務上の瑕疵を個人に負担させるのは、労基法上、問題がある。

私は、本業では、何人もの弁護士と仕事をしている。私に恩を感じている弁護士も何人かいる。たかが、タクシーの運転手、そんなことをあらだてるようなマネをするほど、若くはないが、仕事に貴賎があることを実感した日だった。

担当部長は、明らかに私をなだめる口調だった。たかが、仕事、気にしないことにした。しかし、どこか、悲しい気分は残る。