常連客の罪悪

趣味性が高い店舗ほど、常連客が多い。私は、とても好みがうるさいので、さらに、かつての後輩に言わせれば「腹がない」ので、好きな店や好きな人に対して、感情移入をしやすい(常連になりやすい)。

常連とはいっても、私の場合、いいおっさんなので、物販店や飲食店の常連になっても、ずうずうしい態度をとって、店を困らせるようなことは、ないと思う。

仕事(経営コンサルタント)ではクライアントとの関係で、つい感情移入してしまって、クライアントとの関係が深まりすぎることがある(腹がないので、つい損得抜きになってしまう)。

 

これは、私の業務にとって、諸刃の剣だ。私に依頼が来るほとんどのクライアントは、業務上、何らかの問題を抱えている。あるいは、その奥には人生上の大きな問題を抱えているケースもある。一応、心理学(コーチングをきっかけとして、フロイトユング森田療法認知行動療法などを学んだ)の基本は、かじっている。また、長く「人に聞く」訓練を仕事のなかで経験しているので、「本音を引き出す」ことは、普通の人より、上手だと思う。クライアントとの関係が深まることはいいことだが、ときとして「深まりすぎる」ことがある。いつの間にか業務の関係を超えてしまい「共依存」状態に陥るのだ。ここでうまく友人関係に持ち込めれば、関係を業務と切り離しても維持できるが、そうではない場合、最終的に「期待を裏切る」形になり、訳もない恨みを買うことになる。

また、大きな問題を抱えているクライアントと接していると「かかる」という経験も避けられない。私自身がクライアントの問題と同期化してしまい、私の精神が持たなくなるのだ。クライアントにとっては、問題は一つだが、私は、複数のクライアントの問題に複数関わっている。同期化が、続くと私の精神はもたなくなる。それで原因不明の意識障害を起こしたこともある。

私より、さらにシリアスな自殺防止のNPO法人を主催する人は「自分は避雷針、頭で聞いて足から大地に流す」と話してくれた。この人は定期的に「山」に入って、トレッキングで気分転換をしているようだ。

 

店舗でも似たようなことが起きる。かつて、私が常連客として、通っていたバーのオーナーは、当初、私に特別な感情を持っていたようだ。プライベートな問題から、繁華街のヤクザさんに居座られた問題まで、直接、私に電話で相談がある。私は例によって親身に接していた。ところが、ある日、私が紹介した友人が、店とのあいだで、なんらかのトラブルを起こしたようだ。それから、オーナーの私に対する態度が一変した。まさに手のひら返しだ。私は「またか」と思った。こうしたことは、人生の中で数回経験しているのだ。

私は、常連客を静かに辞退した。

割といい店だったので、1年くらいあいだを開けて、再び訪ねてみた。その際のオーナーの態度も極めて不愉快なものだった。

 

常連客になることは、やめたほうがいい。とくに若いオーナーの店、素人的感情を表面に出す店は、常連に対するサービスも篤いが、感情移入も激しい。

 

数十年と通っていた店は、決して常連ではなかった。一応、私の顔は覚えていてくれるが、必要以上に私に踏み込んでくることはない。物販店も同様だ。店と客の関係性を維持するルールが、見えないところで存在する店舗は、最終的に居心地がいい。

 

私が好きな時計店(アンティックの時計を適正価格で売っている。最近もギュベリンという時計を買った)で、顧客との関係が、悲惨なことになっていると、相談された。すでに顧客は特定されているようだ。まさに常連だった。経済的に余裕はある人(私とは違う点だ)だったようで、一人は著名なカメラマン、もうひとりは、法曹資格者のようだ。

 

モンスタークレイマーの舞台となったのは、恐怖の2チャンネルだ。同一人物が、その店を誹謗中傷するコメントを自作自演で繰り返している。さらに常連客どうしでメール交換をしており、その店の「偽物」疑惑を発信している。調べてみると某サイトのQ&Aの相談として、「主人が偽物をその店に買わされた、法律的にはどうゆう対応ができるか」という話が主婦を装って流れていた。それに答えているのも多分、同一人物だ。

 

オーナーのHさんは、確かに時計のことになるとクレイジーなほど、熱心だ。顧客に対しても、フレンドリーに接してくれる。モンスタークレイマーは、それを勘違いして、店のパソコンを勝手に使う、常識はずれの返品を迫る、など商道徳に反する行為を親しさの勘違いのなかで、繰り返したようだ。さすがにH氏も、それには注意をした。また、返品に応じなかった。それが、憎悪となって、爆発した。アダルトチルドレンとも言える。「あんなに親しくしてくれたのに、あんなに沢山買ってあげているのに」という感情と注意されたことが、曖昧なその人たちの尊厳を深く傷つけたのだ。飲食店なら、行かなければいいのだが、アンティック時計店の場合、メンテナンスも含めて、ある程度、店舗と関係を続ける必要がある。その葛藤が、極端な批判(ネットは質が悪い)に結びついたのだ。

 

Hさんは、自分も悪かったのだが、と反省している。ただ、私にとってもその店舗のあることないことを公開の場で、広められるのは困る。私は友人を何人か紹介している。私の信用にまで関わってしまう(大した信用ではないが)。

 

その手の問題に詳しい弁護士を紹介することにした。私は、業務の中で「トラブルバスター的」業務を行わざるを得ない場合もある。あっち側の人と対峙する必要もあったりもする。自ら非合法すれすれの手段を取ることもある(そのため、弁護士との関係は欠かせない)。なんとか、早く解決することを祈っている。

 

ある程度の社会的地位と経済的余裕がある人が、モンスターであるケースが多い。逆に言えば、そうゆう人は、詐欺に合う可能性が極めて高いのだが。私、その手を騙して泣かせるのも得意です。

 

常連ではないが、好きな王子山田や