税務署よりたちが悪い社会保険事務所

お手伝いしている企業が、突然、社会保険の滞納処理で、口座差し押さえを受けた。その企業は、分納手続きは済ませており、月に2回、社会保険事務所に現金を持参し続けていた。しかし、約束の金額が用意できず、ここ2か月は、約束した金額の4分の1の金額を持参。滞納の総額は、230万円くらい。約束では月20万円の1年間支払いだった。恐縮しながら5万円を納付した直後に差し押さえ通知、社長はあわてて、社会保険事務所に相談にいったが、「これは所長の決定事項だから、午後3時までに半額の120万円を持参しない限り、差し押さえは強行する」と言われた。なぜ、3日前に5万円持参した時に言わないのか。社長は納得できない。結果的に担当者と「言い争い」になってしまった。口座を差し押さえられれば、給料はもちろん、仕入れ資金も決済できない。当然、社長は「破産」が頭に浮かび、呆然となった。

これはおかしい。滞納は確かに問題があるが、少額支払いをしており、払う意思は当然ある。たまたま、資金繰りから「労務債権」を優先したため、約束通りの支払いができなかっただけだ。私は、上級官庁と思われるあらゆる官庁に電話した挙句、最後には、当該社会保険事務所の徴収担当官まで、たらいまわしにされた。担当者は、社長が新たな分納計画を出さないため、差し押さえをする、という。時間は午後2時半、話し合いの余地を確認すると3時までの連絡をくれれば、話し合う、という。私は社長を説得して、再度の話し合いを勧めた。ところが、話し合いにはならない。半額を現金で、明日までに持ってこなければ差し押さえる、とさらに態度は強硬になっている。

社長はあきらめて、入金予定の得意先に事実を伝え、できるかぎり、現金か、小切手での支払いを依頼した。受けてくれるところもあれば、そうではないところもある。

結果的に口座は時期をずらして3回差し押さえされた。実害は数十万円ですんだが、この対応には納得いかない。どうも、社会保険事務所は、資産調査をしたうえで、あえて、少額を差し押さえたようだ。温情であることは間違いない。しかし、中小企業が役人の温情で企業を存立させる、このこと自体意味がない。

自民党政権は、社会保険料の徴収を厳しくしている。年金も同様だ。中小企業の存立基盤は、中央官庁の方針と地方事務所の裁量のなかで、つねに脅かされている。

長くやっていれば「自己資本」が薄い(これも中小企業政策の問題だ)中小零細企業が、税金の滞納をすることもある。役人の対応、政府の対応、上級官庁の対応、すべて、国益を盾にした「詐欺まがい」のやり口が横行している。我々は粘り強く、あの手、この手で生き残る決意が必要だ。

イメージ写真、相談は、取り調べのよう